オフィス併用住宅のペンシルビルを簡易宿所・ドミトリースタイルに用途変更して運営を始めてから2年。現在、アのターコロナに備えて、個室・旅館に改修工事が進められている。。
施設は5階建てで内2・3・4階が一人用のベッドが2段積まれ、5階はラグジュアリな個室とグループ向けブースで構成される簡易宿所・100ベッドが、1フロア4人×3室の計48人・12室の旅館に生まれ変ろうとしている。
インバウンドは好況ではあってもドミトリスタイルは厳しいものがある。去年の7月に知人から別件で「ドミトリスタイルの簡易宿所が売りに出ている。買おうと思う、アドバイスが欲しい。」と。トラックレコードも見せてもらった。「おすすめはしない」とだけ答えた。
その理由はドミトリ・スタイルは構造的に価格競争になってしまうからだ。
一人用のベッド・スペースを低価格で販売する宿泊スタイルは、その上位にカプセルホテルがある。古くからのカプセルホテルは駅近で大浴場とセットでリーズナブルである。私も不覚にも飲み会で終電に乗り遅れ、カプセルホテルのお世話になった経験がある。
カプセルホテルは、ベッド・スペースに空調・換気・自火報・照明・TVとコンパクトなスペースにパーソナルな設備が配置されている。旅館業法上扉はなくカーテンで出入り口が仕切られる。それでも酔っ払いには不自由のない満足できる空間であった。さすがカプセルの大家・黒川紀章先生によるものだ。それゆえにカプセル1台はベッド1台とは全く比べ物にならない位の高額になる。
ドミトリ・スタイルでは、カプセル以上の宿泊費は見込めない。
外国人バック・パッカー向けにグレードを下げてイニシャルコストを落とした文字通りの簡易宿所が急増した。施設への特色も限られてしまい、それを宿泊費に反映させるには限界がある。簡単な施工で安く作り供給するだけでは、いずれ価格競争に陥ってしまう。客に選ばれる理由がなければ、低価格化は消耗戦となり激化するばかりとなる。
開業から1年が過ぎた頃、当オーナは旅館・個室に大転換することを決意された。
簡易宿所-旅館-ホテル間の用途変更は、建築基準法では類似の用途のため確認申請は必要ない。
東京都建築安全条例においても、簡易宿所で必要な窓先空地も旅館では求めらない。
昨年12月に全館個室の設計が開始され、先行して冬に2階を改修し、残りの3フロアを秋に工事を進める予定でいた。2月に着工してから、中国における新型コロナウィルスの深刻さがメディアから伝えられた。当面外国人観光客の宿泊需要は見込めないので、残りもフロアも一気に全館改修する事を進言した。
2階の工事が終わり、3階4階へと順に進み、現在5階の間仕切り工事が行われている。
そこで内装工事が完了した2階を360°写真に撮り合成してみた。
これまでも360°カメラは現地調査では必需品で、アングル的に撮影漏れがなく、撮影枚数も少なくて済むので随分重宝している。
空間の3Dスキャンの方法を探していた。レーザースキャンによる点群データから空間をデジタルで再現する方法は正確だが、効果で時間がかかり、点群データが重いこともあり、他の方法を探っていた。Matterportは専用のカメラの開発と販売もしているが、もっと簡易なものがないかと調べていた。すると360°カメラThetaからも3Dスキャン風に合成するサービスがあることを知り、今回トライすることとなった。
合成写真は実物のごとくウォークスルーや全体を俯瞰することもできる。初めての割にそれなりにできている。
Matterportのsampleのようにスムーズな移動や合成のエラー、色合い、映り込んでしまう撮影者に課題は残るものの、撮影された空間の連続性は確認でき、従来の写真ファイルを次々に開き直す手間が省けれ便利だ。
Matterport は以前から不動産の物件紹介で使われており、最近ではリモートで住宅展示場の見学を可能にしている。
360°合成連続写真によって、インテリアがより正確に再現される。
写真映えを狙った建築デザインは過去のものになるのではないか。