新宿区には旅館業において特有のルールが条例で定められている。施設内では宿泊者専用動線を設けなければならない。つまり宿泊者とそれ以外の動線を分けなければならず、フロアが複数になれば階段やエレベータが2つ以上必要で、廊下も区分しなければならない。
そんな中5階建ての店舗併用共同住宅の一部をホテル・旅館に用途変更して、旅館業営業許可を本日付けで下付された。
新宿区では改正旅館業法の施行に合わせて新宿区旅館業法施行条例も改正されるうわさがあったものの、その内容は明確に示されていなかった。旅館業法の施行日の2日前の6月13日に区議会で議決となり、初めてその内容を知ることになった。そこには先の宿泊客の専用動線の項目が盛り込まれており、既に旅館への用途変更の準備が進められるなか絶望にも近い予想だにしない展開に愕然とした。
その後保健所と事前協議が繰り返された。中には一度合意された事もその後不許可になることもあった。初めてのケースであるため慎重に協議されてのことだろう。
6月13日から始まった事前協議は、7月2日に営業許可申請となり、7月19日の保健所検査、7月23日の消防検査に合格し、8月6日に営業許可となった。
そもそも宿泊者専用動線は、宿泊者を同じ施設内で感染することを防ぐ目的と聞いて一部理解を示すこともできる。しかし、その理屈からすると公共交通の利用やショッピングはじめ観光行為からは守られてはいないといえる。一歩外に出るとそこは無菌状態ではあるまい。ホテルでは宿泊者以外にも外部の会合や宴会が行われ、彼らとの動線は分けられてはいない。宿泊者保護の理屈は成り立たない。
なぜに宿泊施設の複合用途化を懸念するのだろうか?新宿の高価な土地でしかも狭小な場所に2つの階段をとれことは容易ではない。遊休社会ストックの有効活用と逆行する用途変更を困難にさせ得る条例ではあるまいか。