すでに事務所ビル内で民泊事業をされている方から、6月15日に民泊新法が施行されると今の民泊事業はできなくなるので、簡易宿所に用途変更できないかとのご相談です。
築60年、店舗併用事務所で、確認済証アリ、検査済証ナシ、確認申請図書ナシ。旅館業の事業面積は100㎡超えるので、用途変更の確認申請が必要です。
検査済証がなくて用途変更を進めるには、法適合状況調査を行って建物が当時の法令に準拠している事を証明しなくてはなりません。確認申請図がなければ、「復元」と称して当時に遡って図面を作成します。工事記録等から構造が確認申請図通りに施工されていることが確認できればいいのですが、なければ、破壊・非破壊検査を行い構造計算をします。ただ、当時の構造計算プログラムは市中にないの難儀です。費用と時間を掛けて報告書をまとめても、それでもNGになるリスクはあります。法適合状況調査は民間の指定確認審査機関でも行えますが、その調査内容は建物所在する自治体と確認が必要です。
よく勘違いされるのは、旧耐震以前の建物を用途変更する場合に、耐震補強も必要だと考えられているケースが多い事です。用途変更に構造は遡求されません。宿泊施設の積載荷重は用途の中で最も軽いので、構造の負担は大きくはなりません。耐震性を強化するのは任意となります。
宿泊事業を継続されたいのであれば、旅館業の部分と共用部の按分を合わせた面積が100㎡以下であれば確認申請は不要ですので、その範囲に留めるのも一案です。これは確認申請が不要というだけで、遵法性は建物オーナが担保することになります。設計・監理をする建築士も責任を負います。確認申請が不要でも、保健所や消防署は立入検査を行います。東京都では消防の査察で建築物に異常があれば担当の建築課に連絡がいって、建築担当から違法性があれば是正対応が求められます。
最初100㎡以下で確認申請は不要ですが、その後拡張して100㎡を超えるとどうなるか?答えは自治体によって異なります。OKのところもあればその時点で確認申請が必要になるところがあります。
テナントビルの場合、複数の旅館業の申請は可能か?基本的に可能です。事業者が異なり、それぞれが100㎡以下であれば用途変更の確認申請は不要とする自治体が多いようです。雑居ビル状態として扱い、新たに変更となる部分のみ用途変更の対象とする自治体もあります。
用途変更には正確に現況を把握することと、役所や確認審査機関と密に連絡を取ることが肝要です。