違法建築とは知らずに購入した工場に消防の査察が入り、消防から「違法建築」の知らせを受けた建築課が「建築基準法第12条5項に基づく報告書」を提出するよう求めてきた。
依頼を受けて調べてみると、確認申請は2階建てもかかわらず陸屋根の上にはプレファブが載っている。おまけに平面的にも増築され、建ぺい率・容積率ともにオーバし、3階は準耐火構造になっていない。避難器具もない。違法箇所は盛りだくさん。
すでにそこで事業は営まれているので、すべてを改修すると事業が成り立たなくなる。雇用も失われてしまう。そこで役所と協議して、最終目標を3階の増築部分の撤去とした上で、段階的に改修を進めることで合意する。
まず、危険性の排除、火災の原因になりうるガス湯沸かし器を撤去して、貯湯式電気温水器を置く。次に災害時の安全確保を目的に、3階に避難はしごを設け、誘導標識と避難経路図を掲示した。
外壁は軽量コンクリートパネル(ALC)で、パラペットにコンクリートの立上がりはなく、下から上がってきたALCの立ち上がりに塗膜防水が施されている。このALCに避難はしごを掛けて破損・破壊が危ぶまれたので、メーカ3社に問い合わせてみる。1社を除いて「お勧めはしない」と、もっともな回答であった。1社は「避難はしごについたフックがALCの破損を招くので保護が必要」とのことであった。ALCにほとんど曲げ力は発生せず圧縮力であるから、パラペット天端のアルミ笠木の上に補強したステンレスカバーを取り付けることにした。ステンレスカバーは3枚のALCパネルに取り付けることとし、命綱代わりになんと違法に増築されたプレファブが重しとなるよう力を伝える仕組みにした。
役所担当者が現地を確認し了解を得た。
思えば7月末にご相談を受けて12条5項の報告書を提出し、受理されたのが10月末。工事を段取り完了したのが翌年の2月中旬。